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仙台 高速 バスを観察したら

ケツをビームーゲルンクに塗って、試練のとき一九九四年のチャタトン最初の〈UWho〉ツアーは、七月の第一週の週末に予定されていた。 それまでの数カ月聞を、たったひとつのことを悶々と悩んですごした。
沈没船のどこを見るべきか?ツアーの前夜になっても、答えは出なかった。 艦内の行けるところはすべて余すところなくすでに調べてあった。
沈没船から艦名を記した証拠品が発見されることはないのではないか、とささやきはじめるダイパーや第三者もいた。 べつのダイバーらは、運のよい初心者が、マスクの横にタグをくっつけて海からあがってくるのではないかと予想した。
いずれの話も、チャタトンをひどく怒らせたものの、かといって彼に、説得力のある反論を展開できるわけではなかった。 独創性を働かせろと自分に命じた。
妙案は湧いてこなかった。 頭に浮かぶ考えを、無理に箇条書きにしてみた。
どれも、以前に思いついた案の焼きなおしだった。 チャタトンの苦悩の表情を見て、体調が悪いのかと尋ねた友人たちに向かって、彼はただ「本調子じゃないんだ。

アイデアが枯渇した」としか答えられなかった。 七月の〈U-who〉ツアーは、チャタトンの予想どおりのものとなった。
なんの構想も持たずに海に飛びこんだ。 どこから見るべきか順序も決めずに、沈没船を泳いだ。
建造者名がついていないかと潜望鏡を調べた三年前にもこれとおなじことをした覚えがあった。 海上の船へ戻ったチャタトンは、コーラーが尻をたたいてくれないかと、コーラーにいつもの口調でめめしいやっと呼ばれないだんらんかと耳を澄ましたが、コーラーは、ニ00キロ…離れた場所で、家族と困難し、ファイル・キャビネットに鍵をかけていたので、その日のボートは静かだった。
チャタトンはユーガにいった。 「目標がなくては、時間のむだだ」〈UWho〉に対して復讐するかのごとく、チャタトンは、創造性に富んだ激情をほかの沈没船の調査にふりむけた。
一九九四年七月のひとつきに、彼は、〈ノーネス〉第二次世界大戦中、アメリカ沿岸の大西洋でUボートによって撃沈された最初の船というタンカーを発見し、艦名をつきとめた。 また〈セパスチャン〉!ー火事と嵐に襲われて、〈アンドレア・ドリア〉の一五キロ東で沈んだ第一次世界大戦時代の旅客定期船を発見した。
おかチャタトンが歴史に残る沈没船を調査していたころ、コーラーは、郊外の町で、陸にあがったさかなのような生活をしていた。 二度と子どもたちと離れるような事態に直面しないように、元通りの家試練のとき庭にすると決心していた。
フェリシアとの衝突を避け、家族で食料品の買いだしに行くことに熱意をそそぎ、結婚指導カウンセリングを受けている最中に「ばかばかしい」と口走らないようにした。 男女ペアの自転車を買った。
フェリシアがディズニーワールドへ家族旅行すると宣言したとき、自分にあったこともついぞ知らなかった顔の筋肉に動けと命じて、彼はにっこりと徴笑んだ。 ときどき、口を滑らせることはあった。
太陽の照りつける風のない日にベビーカーを押しながら、「きょうの海は鏡みたいだろうな」といってしまう。 「そんな話は聞きたくないわ」フェリシアは立ちどまり、怖い顔をしていう。

「ダイビングのことを考えているの?わたしたちと一緒にいたくないの?」「もちろん一緒にいたいに決まってるじゃないか」とコーラーは答える。 そのあとまた歩きな、から、心のなかで呪文を唱える。
「うんざりだし腹も立つけど、これも子どもたちのためだ。 子どもたちのため。
おれは家族を愛している。 子どもたちのため:最初のころ、チャタトンは決まって電話をかけてきた。
「リッチー、Uボートのツアーが決まった。 行くか?」「いやあ、行けない」コーラーは答える。
「行けないとはどういうことだ?リッチー、こんなの狂ってる。 このままで生きていけるのか」コーラーの内面はぼろぼろだった。
だが彼はただ、「悪いな、ジョン」とだけ答えた。 天候のせいで、チャタトンのUボート・ツアーは中止になってばかりいるといううわさを聞いてほっとした自分に、罪悪感を感じたりもした。
コーラーは決心を固めていたので、ダイビングには手を出さなかったものの、ちょっとしたあいまを見て、情熱を点滴注入した。 あちこちの軍事専門書庖のカタログ集めはやめず、わずかでもUボートに関係する書籍はすべて購入し、彼の好みをよく知る業者にこっそりと電話をかけて在庫を確認した。

ドイツ海軍の大版地図がおまけについているUボートのテレビゲームを買い、ワシントンで調査したときに自分でこしらえた地図とその地図を照らしあわせた。 一九九四年最大の感動のひとつは、二枚の地図が一致することがわかったときだったといっていいかもしれない。
コーラーが期待したとおり、秋がくると、Uボートに潜りたくてたまらない気持ちがすこしは落ち着いた。 ところがこんどは、〈Uーwho〉の乗組員のことばかり考えるようになったのである。
何年も前から、彼らの悲惨な最期を想像してきた爆発、頭から投げ飛ばされる黒こげの死体、どっと押し寄せる海水。 名前がわかったいま、コーラーは彼らの人生に思いをはせるようになった。
父がシーガルさんから聞いた話に出てくる時代のドイツを思い描いた。 膝をまげないグースステップで兵隊が行進する国ではなく、家族や恋人、生まれ故郷の町、自慢の郷土料理、将来の希望に満ちた国を。
乗組員名簿を見て、そのなかのだれが映画好きでだれが音楽好きだったのだろうかとか、地元のサッカー・チービームーゲルを応援したのだろうかとか、だれが魚雷発射管のハッチに恋人の名前を書いたのだろうかと思いをめぐらせた。 最期にいたるまでの艦内の暮らしさえ想像できた。
チェッカー大会の優勝者に贈呈された桃の缶詰、ソーセージを焼く料理係、レコードをかける通信士。 ニュージャージーにそっと冬が忍び寄るころ、こういった思いが、コーラーにとって義務感に変わった。
自分には乗組員に対する責任がある。 彼らの大切な家族にその最期も知らせないまま、彼らを無名の墓所に眠らせておくわけにはいかないと、ますます強く思うようになった。

そして自分はおそらく、この男たちの身元をあきらかにしたいと願う、世界でただひとりの人間だろうという思いがふと浮かんだ。 しかしいまは、彼自身の家族の義務にしばられて身動きが取れない。
自分の家族に対する責任があるために、乗組員の家族に対してすべきことができないという点が、彼には奇妙に思われた。 コーラーは、借家の外に降る雪を見つめた。
この数年は、雪を見ると、あと二、三カ月辛抱すればまた海に行けると考えてきた。 ことしは、本来の自分とこれほどまでにかけ離れたことはなかったと感じ、雪は永遠に降りつづくように思われた。
試練のとき一九九五年の新年があけてまもなく、チャタトンとコーラーは夕食をともにしたが、今回はスコティーズでなくビームーゲルザ屋だった。 ふたりが自然体で過ごしていたこれまでは、食事の席で何時間も話しこんだものだった。
その晩は、ごく短時間で終わった。 「ことしも潜らないのか?」チャタトンは尋ねた。
「ああ」コーラーは答えた。 「なんとしてもつづけないと。
フェリシアのせいで気が狂いそうだが、子どもたちのためにがんばり通さないとならないんだ」「そうか」「〈UIWho〉のことで、チャタトンのトレードマークの大躍進はあったか?」「そのことで頭はいっぱいさ。 なにも思いつかない。
まったく鼻も利かない」「ほかのダイパーはなんといってる?彼らの目標は?」「リッチー、もうだれもあそこへ行きたがらないんだ」


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